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 成田発デリー行の機中、4人掛けの左二人は旅行会社勤務のOLさん、右隣はデリーに住むバラモン階級の夫人だった。
 せっかくだったのでデリー夫人にヒンドゥ語を教えてもらうことにした。簡単な挨拶ばかり、僕は「地球の歩き方」を片手に彼女の言葉を繰り返す。
 その中で印象的だったのが、「ありがとう」だった。「歩き方」には「ダンニャワー(ド)」と書いてあるが、彼女は「スークリヤ」の方がベターだと言う。後で知ったのだが、「スークリヤ」は上流階級の人々が使う言い回しだとか。僕は彼女と別れてからインドを後にするまで、「ありがとう」を「スークリヤ」と言うインド人には一度も出会わなかった。「スークリヤ」を使う身分のインド人はほんの一握り、そういう国なのだ。
 機内食は変な味のカレー。僕がガツガツ平らげていると左のOLに「どこへ行っても生きていけそう」と笑われる。うっさいわい。