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 デリー国際空港に到着したのは夜9時過ぎだった。プリペイドタクシーで市内へ向かう。しかしこれがとんでもないタクシーだった。プリペイドなのでタクシー料金自体でもめることはないのだが、このタクシーはリベートをもらっている知合いのホテルに強引に連れて行く類のタクシーだったのだ。まあそもそも、運転手以外の怪しい男が助手席に乗り込んできたときに断固として拒否しなかった僕も悪いのだが。
 最初に連れてこられたホテルで500ドルという法外な値段を提示され、値切る気にもなれずに一人暗い路地へ飛び出すも、全く道が分からない上、路上には怪しい男や野犬(間違いなく狂犬病の)がたむろしている有様。他のリクシャー(三輪タクシー)を捕まえようとするとさっきのタクシーがやってきてそれを阻止するというしつこさ。結局、どんな宿でもいいからとにかく駅の近くまで行ってくれ、と念を押して再びタクシーに乗り込んだのだった。
 走り出してしばらくすると、何となく賑やかな町並みになってきた。僕は、ここからなら自力で駅前の安宿街まで行けると判断し、交差点でタクシーが徐行した隙に、ドアを開けて強引に外へ転がり出て、脱出に成功したのだった。
 しかし次の朝、明るく活気にあふれるデリーの街並を目にした時には、昨夜の出来事が夢だったのではないかと思えた。