■ラオス日報2005 バンビエン編 -050720-

 9時起床。昨日は20時くらいまで雨が降っていたが、その名残の薄い雲が日光を和らげている。概ね好天だ。雨季にもかかわらずこうも天候に恵まれると、逆に旅の後半はずっと雨なんじゃないかと不安になってしまう。
 そう、今日は九日間の旅の五日目。ようやく折り返し地点なのだ。二日目の相方の発言ではないが、もう長い年月ラオスで暮らしているような錯覚を覚える。日々の出来事が、あまりに高密度に過ぎる故なのであろうか。

 ところで、タイやラオスで最も一般的な半透明の米製の麺(メニューでは"Rice Noodle with Soup", "Fried Noodle"等)のことをラオスでは「フー」という。ベトナムの「フォー」から来ているとのこと。ラオス文化の多くはタイ北部のそれと共通なのだが、このように要所要所にベトナムも混ざっているのが面白い。その「フー」を食して、町へ繰り出す。

 

毎度おなじみの麺、その名は「フー」             朝食に欠かせない豆乳。今日はビン。

 繰り出すといっても、何があるわけでもない。インターネットカフェで時間をつぶし、町なかにある渋い寺や、川、橋、民家などを眺めながらブラブラする。

 

バンビエンの繁華街                       美容室。モデル?の写真がたくさん貼ってある。

 

 

 

便器がこのように大々的に店頭販売されている
 

 ブラブラしていると、筆者の腹が何らかの危険信号を訴えかけてきた。折しも12時を回ったところである。腹具合が風雲急を告げる中、視界に入った食堂に飛び込み、相方に注文を任せて厠に滑りこむ。危ないところであった。
 フライド・ヌードルを頼む。言い換えれば「揚げフー」となるだろうか。昨日宿で食したものとは微妙に味付けがことなり、これはこれで美味いのだが、ナンプラーよりは塩風味が勝っている。やはりそれぞれに家庭の味というものがあるようだ。確かに日本でも、一言で「ラーメン」と言ったとて千差万別なのだから、違って当り前である。
 ところでラオスには、日本でいう石神秀幸氏のような「フーの神様」のような人物がいて、「ここのフーは魚系の出汁と中細の麺が絡みあって妙をなしている」とか「あそこのは基本的には背脂チャッチャ系なのだが、それが独特の鶏ガラとトンコツのミックススープと絶妙なハーモニーを醸し出している」などと評論するような文化はないのであろうか。

 

こんな「フー」もある                        コーラ


ゲーム?

 昨日ほどの強烈な太陽光線はないが、それでも時折雲の合間からジワっと焼き付けるような太陽が顔を覗かせる昼下がり、相方の希望により、今度は宿のそばの船着き場からソン川の対岸へ渡り、特に目的も定めず歩いてみることにする。
 この辺りの地形は、ソン川を挟んで表情が大きく異なる。ソン川を谷底として、その両側を山が囲むようになっているのだが、下流に向かって左側の山々は通常の緩やかな山並みであり、一方右側に目を向けると、一転してこの地方を「ラオスの桂林」たらしめている峻険な岩山がボコボコそびえたっている。
 宿やバスターミナルを含むバンビエンの中心部は、このうちの緩やかな山側に当たるのだが、ソン川を挟んだ反対岸の岩山地域のふもとは、宿側からはジャングルに隠れてよく見えないのである。そちら側の風情を見てみたいという相方の意見に、筆者も大いに賛成である。

 対岸に着いて船を降りるとすぐに雑貨屋やカヤ葺きの民家などが並ぶ路地が続く。
 その集落を過ぎてさらに歩いていくと、やがて意外な風景がパーっと目の前に広がった。鋭い岩山の麓を一面埋め尽くすように真緑の水田が敷き詰められていたのである。宿のある対岸からは川沿いのジャングルに隠れて岩山以外に何も見えなかったのだが、まさかこのような広大でのどかな風景が広がっているとは夢にも思わなかった。

 水田で遊ぶ子供たち、三角の麦わら帽子で稲作を行う人々、我々に道を譲るように身を寄せ合って歩く野良牛の群れ、岩山と水田と空の青と白の、刻々と変わっていくコントラスト。何もない道だったが、決して飽きることはなかった。

 


 
道の真ん中に群れて歩いていた野良牛たちが・・・人とすれ違うときは一列に並ぶ。ここの牛たちは非常に行儀が良い

 


 などと格好良いことを言ってみたものの、30分くらい歩いているとさすがに飽きてきたので、引き返すことに。途中、幾人かの地元のオッサン達に、「この先に洞窟がある」みたいなことを言われたのだが、「モトバイクで5キロ」とか言ってるように聞こえたので、断念して船着き場に戻ることにした。

 宿に戻って30分くらいすると、案の定雷鳴が轟いてきた。パターン化されていて分かりやすい天候で大変助かる。

 宿のレストランに白熱灯が灯される頃、少しずつ輪郭を暮色に溶かしていく岩山とビアラーオとともに、バンビエン最後の夜は更けていく。明日は再びビエンチャンである。

 

揚げ春巻き                    鶏肉となんかの野菜の炒め物。何か忘れたけど美味かった。