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■中国西域日報2006 カシュガル編 その3 -06/09/15- |
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今日は実質的にこの旅の最終日である。明日には北京に戻ってしまう。そして、そんな最終日にふさわしい、最高の一日であった。
まずは、「アパク・ホージャ墓」へ向かう。ここはタイル張りのモザイク壁とドーム状の屋根が非常に美しい、16〜17世紀にこの地に興った新疆イスラム教白帽派の権力者一族の陵墓。そのまさにモスク風の建築様式は、中央アジアイスラム教の風情満点である。

アパク・ホージャ墓


そしてそれよりも素晴らしかったのが、この近辺の集落。カシュガル市街からタクシーで10分ほどの郊外にあり、それはもう素朴なウイグル族の暮らしが垣間見える。
ポプラ並木と土壁の民家、そして行き交うロバ車。木陰でトランプに興じるオッサンたちや、ナンを焼くおばちゃん。昨日の旧市街はどちらかというと頑張って町並を保存している感があったが、これは全くの素の姿である。もう最高である。


ウイグル・ナン

マルコメ君? ウイグルの町ではいたるところにロバが

まるでイギリス紳士のような顔立ちと服装のお父さん

密かにフルチンです

さらに最高の光景は続く。昼飯に昨日と同じ店で牛肉面を食べた後、相方は疲労のため宿へ戻ったが、筆者は単身路地探索に打って出ることにした。宿(チニワク賓館)のすぐ近くにウイグル族の商店街があったので、そこへ紛れ込んでみることに(この町では、人口の7割を占めるウイグル族の居住地域と、漢民族の居住地域が明確に分かれている)。

土壁が見えたらそこはウイグル族の町。まるで要塞のよう。
するとこれがまた素晴らしいではないか。もはやここは完全にイスラムの町である。土色の町並みに、店先に何重にも広げられたペルシャ風の絨毯、シシカバブを焼くオッサン、ブドウや野菜を道に並べるオッサン、ロバ車で瓜を売るオッサン、慎ましく頭から布をかぶって歩く女性達、その間を縫うように走り回る、茶色がかった髪とぱっちりとした目の子供達。
中心地の大通りでは、看板は漢字表記とウイグル表記が並んで書かれていたが、ここではもはやアラビアンなウイグル文字がメインで、中にはウイグル文字しか書かれていない看板もある。
また、町なかに響く声音も、完全に中国語の調子とは異なり、イスラム風情である。よく中東情勢のニュースなどで聞く、イラク国営放送などの口調を思い出す。
しかも、ウイグルの人々は本当に感じが良くて、「ハロー」と言いながらカメラを向けると笑顔で答えてくれる。ラオスやミャンマー、スリランカなど、東南アジア、南アジアの心温まる人々の国のことをついつい思い出してしまう。
それと同時に、マナーや礼儀、ホスピタリティに対する考え方が全く異なる中国の漢族の人々のことを、頭では「これがここの人々にとって当たり前なんだ」と分かっていても心ではまだまだ受け入れられていない自分に気づかされる。(もっとも、敦煌のシルクロードホテルの親切な小姉のような人にもたまに出会うのだが)

ウイグル人の路地へ差し掛かるとそこは別世界への入り口のよう 下校中のギャル達。様々な民族の顔立ちが集う

ベッカムのような顔立ちのイケメンシシカバブ屋さん

絨毯もここの名産


働く少年達。爽やかだけど、苦労してるんだろうなあ

ナン

アラビア文字風のイスラム文字が溢れる なんの騒ぎかと思ったらトランプだった
それほどに中国色の薄いウイグルの町を歩いていると、こんなことを考えてしまう。一体、このウイグル人達にこんな問いかけをしたらどんな答えが返ってくるのだろうか?
「あなたは何人ですか?」
これは良くない。「ウイグル人だ」と答えるに違いない。
「あなたの国籍はなんですか?」
果たして「中国です」という答えが帰ってくるのだろうか?(まあ、彼らは生まれたときからこれが中国だと思ってるだろうから、きっと普通にそう答えるのだろうが)
この路地があまりに素晴らしかったため、晩飯前に相方を連れて再度散策することに。路地を歩いていくとエイティガール寺院脇の土産物街に出たので、小型の絨毯(壁掛用?)(140元)やウイグルナイフ(10元)を購入。さらに、念願のシシカバブ@屋台を食する。そういえば、昼過ぎよりも夕方の方が人通りが多くて出ている店も多く、賑やかなようである。そして、何度通っても表情豊かで素晴らしい商店街である。

土産の絨毯

土産のウイグルナイフ。折りたためる
満足に満足を重ね、〆の晩餐は、厳選の結果、恒例の牛肉面の店に決定させていただいた。ただし、今夜は特別に焼きうどん風の麺も追加でいただいた。ビールも頼んだのだが、店内に在庫が無いらしく、隣の超市でぬるいのを買ってきてくれたのはご愛嬌。(ちなみにここは漢族の人がやっている店。基本的に無愛想だが、常連化するとこのように尽力してくれる一面も。この辺りに漢族攻略の糸口があるのかもしれない)

最後の牛肉面屋で食べた焼きうどん風の料理
またしても自分の胃袋の容量を過信してしまい、若干オーバーフロー気味であったが、ド満足で宿へ戻ったのであった。帰りがてら、超市で怪しげなワインを購入。「和田石榴酒」。ワインの一種らしいが、ぶどう酒ではないようである。開けてみると、色は赤ワインの赤に茶色い渋みを加えたような色、味は若干ブランデー、そして香りはまるで紹興酒のようである。世にも珍しい酒に遭遇してしまった。帰国後調べてみよう。
現在時刻は22時。日没の遅いカシュガルの夜はまだまだ喧騒の中にある。

こんな最果ての地にも日本の菓子が。なんとなくホッとする
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